戦場に散った女性ジャーナリスト



2012年8月20日、ジャパンプレス所属のジャーナリストだった山本美香は、シリア内戦の取材中にシリア北部のアレッポにて銃撃を受けて、搬送先の病院で死亡が確認された。享年45歳。

1990年都留文科大学文学部英文学科卒業後、朝日ニュースターに入社した。

1995年朝日ニュースターを退職後、フリーランスを経てアジアプレス・インターナショナルに所属。

1996年からは独立系通信社のジャパンプレスの記者として、同社ジャーナリストの佐藤和孝とともに戦場を取材していた。

イラク戦争、タリバン支配下のアフガニスタンなどで取材を続けていた。

2003年から2004年にかけて日本テレビ「NNN今日の出来事」のフィールドキャスターを務めた。

2008年に早稲田大学大学院の非常勤講師に就任、母校である都留文科大学にも臨時講師として教壇に立ち、世界各地を取材して見聞してきたことをもとに講義を行った。

2012年8月14日に内戦が続くシリアに入った。

戦火の中にある女性や子どもたちの声に耳を傾けることがライフワークだった。

タリバン政権下のアフガニスタンでは女性の暮らしに密着し、イラク戦争では空爆下のバグダッド市民に寄り添った。

ホテルが集中爆撃され、隣室で複数の死者が出る極限状態に置かれても、ビデオカメラを回し続けた。

今回は14日に現地入り、取材結果を日本テレビの番組で報告。20日午前、キリスのホテルからシリアに入り、同日夕までに戻りテレビ中継車を使う予定だった。21日夜の日本テレビ系「NEWS ZERO」で、山本さんが最後に撮影した映像が公開された。空爆を受ける街で暮らす女性や赤ちゃんの姿。そして1発の銃声。映像はそこで途切れていた。

この事件直後にメディアに対応したのがジャパンプレスの同僚の佐藤和孝だった。

山本美香は生涯独身だったが、佐藤和孝は15年近く事実婚を続けており、佐藤は「公私ともに最高のパートナーだった」と語った。

山本の死後、次世代のジャーナリスト育成を目指し一般財団法人山本美香記念財団が設立され、山本のジャーナリスト精神を引き継ぎ、果敢かつ誠実な国際報道につとめた個人に対して「山本美香記念国際ジャーナリスト賞」が創設された。