初めてのデリヘルで出会った風俗嬢の涙



俺はその日も妻に冷たくされ、腹が立ちデリヘルを呼ぶ決意をした。
妻は人生で初めて出会った女性で、それまで他の女性と深い中になることは一度もなかった。
妻と出会って20年、風俗にも興味がなく、浮気もしたことがなかった。

お店に電話しようとしたものの、電話する勇気が出ず、何度もためらった後、ようやく電話をすることができた。
指名したのは、店で一番清楚なイメージの「みひろ」という26歳の女性だった。
待ち合わせ場所に来た彼女は、風俗嬢とも清楚なイメージとも異なる、どこにでもいるような普通の女性だった。
待ち合わせ場所からホテルまでの道のり、初めて会った俺と会話を成り立たせるために、ゲームやアニメなどいろいろな話をしてきた。
すごく美人という感じでもなく、好みの顔ではなかったが、若くて綺麗な肌は十分魅力的だった。

ラブホテルの部屋に入ると、彼女はテキパキと準備をし、風呂を沸かし始めた。
勝手がわからず、どうしたらよいかぼーっと立っていると、「座りませんか」と話しかけてきた。
風呂に入って体を洗ってもらい、一緒に湯船につかった。
現実であって現実でないような不思議な感じがした。
その後、風呂から上がり、ベッドに移動して行為を終えた後、体を洗った後、ベッドに座って時間まで話をした。
時間は80分間しかないが、行為を終えた後20分間ほど話をする時間があった。

俺が車好きなのを知り、親が整備士をしていることを話してくれた。
また、出身が愛知であることや普段事務職をしていることなども話してくれた。
話す過程で外国語が好きという共通の話題が見つかった。
時間になったのでホテルを出てホテル前で別れた。
行為については思っていたほどの感動はなかったが、みひろの人柄が好きになり、もっといろいろ知りたいと思うようになった。

風俗店のホームページでは、キャストが自分の日記を書く仕組みがあり、みひろもよく日記を書いていた。
客を取るためか、卑猥な内容を書いているキャストが多い中、みひろの内容は語学、教育、社会問題など、まじめな内容ばかりだった。
彼女のことを知りたいと過去の日記を読んでいたときに、ある別の名前が書いてあることに気づいた。
いつも日記の最後に「みひろ」と書かれていたところに、なぜか別の名前が書かれていた。
もしかしたら、別の店で働いていて、そちらの源氏名を間違えて書いたのではないか?と思い、Googleで検索して調べてみることにした。

Googleで検索して引っかかったのは、予想に反して風俗店のページではなく、みひろの個人ブログだった。
それがみひろのものであることは、風俗店の日記と同じ画像を使った似た記事が複数あったのですぐにわかった。
そこに書いていたことは以下の通り。
・学生の頃、親が病気になりお金に困り風俗店で働き始めたこと。
・大学生の頃に借りた奨学金とカードローンが残っていて返済を続けていること。
・将来子供に外国語を教える仕事をしたいということ。
そして、別れた彼氏が好きで必死に追いかけていること。

3週間後、どうしてもみひろに会いたくなって、みひろを呼ぶことにした。
行為をしたいというよりは、話がしたかった。
今度は話をする時間を十分に取るため、100分コースにした。
会うのは2回目なので、お互いかなり打ち解けていて、いっしょにいる間ずっと話をしていた。
通っていた大学のこと、奨学金の借金が300万円があること、転職しようとしていることなど。
もちろん、それらに偽りがないことは、ブログの内容と一致していることでわかっていた。
風俗嬢が客に本当のことを話す必要などないのに、初めて会った時から話した内容がすべて真実だったと知り、ますますみひろのことが好きになった。
東京で働いていると思っていた彼女が、平日は愛知で働いていて土日だけ出稼ぎで店で働いていると知ったときは驚いた。
身バレ防止のため、そうせざるを得ないとのことで、夜行バスで移動しているとのことだった。

俺は来る前から、二度と会えなくなることも覚悟で、ブログの存在を知ったことを彼女に告げることにしていた。
なぜそうしようとしたのかわからないが、そうしなければならないように感じたからだ。
彼女にそのことを告げると、少し驚いたようだったが、思ったよりは取り乱したりはせず、淡々と会話をしてくれた。
そして、今まで通りに将来の仕事や元彼氏との関係など、いろいろと話をしてくれた。
俺はその日「影で応援しているよ」とみさきに言った。もちろん本心からだ。
俺が共感してくれたのが嬉しかったのか、みさきは泣いていた。

転職がうまくいきそうで、転職をしたらあまり風俗はできなくなるとのことだった。
新しい仕事に就いても、収入は増えないので、しばらくは今の風俗店を続けると話していた。
また、出勤することがあったら、絶対にみひろを呼ぼうと思っていたけれど、俺は出張でしばらく呼ぶことができず、出張から戻ってからは、みひろがその店に出勤することは二度となかった。
しばらくして、店のホームページから、みひろのパネル写真も日記も消えて、みひろとの永遠の別れが来たことを悟った。

みひろとの縁は切れたけれど、個人ブログを知っている俺は、みひろの頑張っている様子をブログを通して知ることができる。ブログの存在を知らせたことは、良かったことなのかどうか今でもわからない。一つ言えることは、みひろは俺がブログを見ていることを知ったということだ。ブログを書くときに、時々俺のことを思い出してもらえたらいいなと考えている。

みひろとの縁が切れた後、俺は風俗は引退しようと思っていたが、その後も時々同じ店を利用している。みひろは、俺と最後に会ったときに、他のキャストのこともいろいろと話してくれた。俺がまだ同じ店を利用しているのは、みひろと接点があったキャストとの交流をすることで、みひろとつながっていると思えるからだ。

みひろとのたった180分の交流は終わりを告げたが、みひろの肌のぬくもりを生涯忘れることはないだろう。