猫のアン



私が小学生の時、野良猫が家に懐いて子猫を生んだ。メス一匹とオス三匹。

その内、オス二匹は病気や事故で死んだ。

生き残ったメスとオスには、アンとトラという名前を付けた。

私たちはメチャクチャ可愛がった。

アンは女の癖におてんばだった。

いつも一緒の布団で寝ていた。

ある日、親父がアンを勝手に避妊手術に出した。

帰って来たアンは…、手術の失敗で障害猫になっていた。

歩くこともできず、食べることもできずに、それでも一生懸命生きようとしていた。

私はアンに生きていて欲しかったから、一生懸命世話をした。

餌を細かく切って食べさせたり、親にはダメだと言われていたけど、家の中に入れて温めた。

その甲斐あってか、アンは次の春には歩けるようになり、餌も自分で食べられるようになった。

それに安心してしまって、私はアンの世話をあまりしなくなっていた。

月日は流れて、また冬がやって来た。アンは、弱って行った。

そして…アンは死んだ。

最後の日は不思議と元気があり、自分で餌をがつがつ食べたのだそうだ。

死因は、餌が喉に詰まったことによる窒息死。

私がアンの世話をさぼらなかったら…。

ごめん、アン。とても苦しかったでしょ? ごめんね。

あなたが苦しみから解放されたことだけが、私の唯一の救いです。