意識不明の花嫁に呼びかけ続ける新郎



二人が知り合ったのは10年前。そこから交際をスタートし、2年目迎えた記念日に結婚を決意します。半年後の2007年3月、幸せいっぱいのカップルは結婚式をあげる予定でした。

式に向けて着々と準備を進めている最中、二人に思いもよらない悲劇が襲いかかります。

結婚式まで残り3ヶ月と迫ったある日、新婦である麻衣さんの記憶が突然なくなります。

そのあとも謎の奇声や暴言を発するようになり、急遽入院することになりました。

入院から3日後、原因不明の病により意識不明になります。突然の出来事で、新郎の尚志さんは結婚式をいったん保留にします。

麻衣さんが目覚めたときにショックを受けないように、と。

そこから二人の、長い長い闘病生活が始まります。

一時は心肺停止になり、一命を取り留めたものの意識は戻らないままでした。

尚志さんは麻衣さんが目覚めることを信じて毎日病院に通い続け、マッサージしたり、麻衣さんの好きな音楽をかけてあげたりして献身的に看病していました。

麻衣さんが眠り続けて1年が経ったある日、麻衣さんのお母さんは尚志さんに言いました。「もっと元気な子がいるから、他の人を探したらどう?」と。

ですが尚志さんは「もう一度麻衣の笑顔がみたい。そばにいさせてください」そう言って麻衣さんの両親に頼み込みました。

眠ったまま1年半が過ぎたころ、麻衣さんが目を開けました。ただその顔には表情がなく意識はまだ戻ってはいませんでした。

尚志さんは諦めずに看病を続け、とうとう麻衣さんの顔に笑顔が戻ります。

麻衣さんが意識を失ってから6年という月日が流れていました。

笑顔が戻った麻衣さんでしたが、毎日看病していた尚志さんの記憶はありませんでした。それでも尚志さんは諦めず、改めて二人で愛を育んでいき、徐々に記憶も戻ってきました。

それから2年、必死にリハビリを頑張り「保留」にしていた結婚式でバージンロードを歩くことができた麻衣さん。

8年越しに実現できた結婚式で、お母さんに「頑張ったね」と声をかけられた麻衣さんは大粒の涙が止まりませんでした。

尚志さんが8年も経って結婚式をキャンセルしなかったのは、「二人で決めたことだから」。

いつ目覚めるかわからない状態で待ち続けるということは決して簡単なことではありません。それでも諦めずに看病し続けた尚志さんの麻衣さんへの愛は誰にも邪魔されることのないかけがえのないものでしょう。

8年という長い長い月日を経て実現できた結婚式は、まさに奇跡と呼べる出来事となりました。