「こんなのいらない!!」
と、部屋の真ん中で絶叫しながら、俺の買ってやったクマの置物を壁にぶつけて逃げる妹。
きっかけは些細なことだった。夕食で出た肉の最後のひと切れをどっちが食べるかで口論になったのだ。それがだんだんとエスカレートしていき今に至る。
つか、修学旅行のお土産だぞそのクマの置物。俺ショックだよ。無残に割れてるよ。
あぁあ。これ絶対直んないな。せっかく俺のおこずかい叩いて中学入学祝いに買ってやったのに。これが噂の反抗期ってやつなのかな。
「はぁ……」
なんかアホみたいな喧嘩だった。めったに喧嘩なんてしないから余計落ち込む。
PCでもやって落ち着こう。
俺は起動済のノートPCを開き、すぐさま某動画サイトにアクセスする。
いつもならここから楽しい楽しい動画鑑賞タイムが始まるのだが、画面の横に「クマのぬいぐるみ」とかいうおもちゃの広告が載っていたため、逆に気分が害された。
12時30分。今日はもう寝ることにしよう。
そう思った瞬間、となりの妹の部屋からすすり泣く声が聞こえてきた。
扉が少し空いていたのでそこから覗き込むと必死に「クマの置物」をボンドでくっつけようとする妹の姿があった。
……まったく、そうなるなら最初から壊すなよな。
俺は静かに部屋に戻り、「クマのぬいぐるみ」の広告を思い切りクリックしてやった。