家族の泣ける話

娘は『きっと大丈夫だ』

ある日のこと。

娘が、幼稚園からずっと楽しく通っている習い事のコーチから電話が入った。

「夏休み恒例の強化合宿の申し込みがまだなのですが…」と。

『あれ?』と思った。

それなら、前々回のレッスンの時に、既に娘に渡しているのに。

コーチにはそれを伝え、参加の旨を伝えた。

しかし、、またレッスン日が過ぎた何日か後、電話がなり、

『今度は本人が行きたくない』

と拒否していると伝えられた。

あんなに楽しく通っていたのに。

全国大会で優勝するのが、幼稚園からの夢だったのに。

『あの娘は、何を考えているのか』と。

疑問に思い、学校から帰ってきた娘に、問いただしても

「行きたくない」の一点張り。

最近、レッスンに同行出来ないのを拗ねているのか?

はたまた、レッスン仲間と何かあったのか…

不安ばかりが募っていた。

その後、合宿が近くなるにつれて、今度は『辞めたい』というようになった。

私は『メンタルの弱い娘が強くなるには、乗り越えなくてはならない壁だ』と思い、娘にきつく当たった。

『きっと、この壁を乗り越えなくては大人になっても、何か壁にぶつかった時に、逃げ出してしまうのではないか』

という不安と焦りがあった。

わたしは、娘の成長を見ることが出来ない。

ステージ4のガン患者であり、余命は1年と告知されている。

そんな中、強化選手に選ばれるまで必死にやってきた娘の壁を乗り越えさせる大事な試練。

たけど、乗り越えられるどころか、精神的に体調を崩し学校生活にも支障が出始めた。

結局、レッスンを休むことになり、様子を見ることにした。

そうしたら不思議と、娘の毎日体調が良い。

それを見たわたしは、とうとう勘忍袋が切れてしまい

「仮病を使うほど、そんなに行きたくなかったのか!」

と、怒鳴ってしまった。

何日かして娘の部屋を掃除していたら、日記帳を見つけた。

『レッスンを休むきっかけが書いてあるのではないか?』

と、悪いことと思いながらも中をみてしまった。

そして、そこには明確に理由が書いてあった。

合宿に行けない理由。

練習が辛いわけでもない。

レッスンが嫌いになったわけじゃない。

1週間、合宿に行ってる間にママが天国へ行ってしまうのかと思うと、絶対に行けない。

と、はっきり書いてあった。

もちろん娘に私の病気を話した事もないし、余命の話もしてはない。

だけど娘には気付かれていたんだね。

私を心配したからこそ、夢へ近づくための合宿を行かずに、私と一緒にいようと思ってくれたんだね。

私は思わず泣いてしまった。

『私は娘の何を理解していたのだろう…』

何にも理解せず、母親をきどって、『壁を乗り越えさせなきゃ…』なんて思ってたんだろう。

私に何も言えず、精一杯の意思表示をしている娘に、何も理解せず怒鳴ってしまったこと。

私は母親失格だ…

そして、娘は『きっと大丈夫だ』と思った。

まだまだ10歳の娘と、もっともっと一緒に居たい。

貴女の成長を沢山みたい。

夢が叶って、全国大会で頑張っている貴女をみたい。

ごめんね、こんなママで。

こんなママだからこそ、合宿に行かずに、一緒に居てくれようとしたんだね。

ありがとう。

私の大切な大好きなムスメ

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