恋愛の泣ける話

【恋愛の泣ける話】64ビートのプロポーズ

ヤバイ。
プロポーズヤバイ。
まじでヤバイよ、マジヤバイ。
何より言い出す前から過呼吸気味の俺ヤバイ。

彼女「大丈夫?」


とか心配してくれてる。スマンこんな時まで・・・。
まず緊張。
もう緊張なんてもんじゃない。
超緊張。
心臓64ビートぐらいで高鳴ってる。
ホント死ぬかも。
緊張とかっても

「彼女に初告白したとき」

とか、もう、そういうレベル超えた。
アレより緊張するコトなんて俺の人生に無いと高くくってた。
甘かった。
何しろ

「結婚してくれ。」

って言う。
同棲5年以上経ってようやく。
5年ありゃ赤子も喋って走り回るようになってる。

で、言った。
意を決して。
ガチガチに緊張して。
彼女の正面に座って。
目を見据えて。
出来るだけ思いこめて。

『俺と結婚してくれ。』

これ以上セリフ長いと噛む恐れがあった。
それは避けたかった。
だからシンプルに、でも思いはありったけ込めて言った。
彼女ビックリしてた。
目がまん丸だった。
余裕で円周率計れちゃうくらい。
でもすぐにブスくれた顔になった。

で、彼女の返事は

「やだ。」

以上。
それっきり。
おまけにそっぽ向いてTV見始める始末。
ちょっと待て。
断られる理由は山のように思い当たるが、ひらがな2文字で済ませるヤツがあるか。
話のわからんヤツだ。

けどそっからヤバイ。
彼女泣いてる。
泣きまくり。
TV見るふりして俺から顔背けて泣いてる。
しかも尋常じゃない泣き方。
ヤバすぎ。

でも俺なんにもできない。
状況が理解不能で固まってるしかできない。
我ながら不甲斐ない。
一頻り泣いたら彼女トンデモない事言い出す。

「私、赤ちゃん産めない。」

このセリフ聞いて何が出来るか?
テレビドラマの主役なら格好いいこと言えるかもしれない。
でも俺には無理だった。
だって俺はブラウン管の外に生きてる人だから。
「は」と「へ」の中間みたいな

「へぁ?」

って声しか出てこない。
たぶんスゲェアホ面だった。

未だ固まってる俺に彼女が語る。
昔、子宮の病気したこと。
手術で命は無事だったけど子供産めなくなったこと。
辛かったその後のこと。
毎日泣いて過ごしたこと。
俺に出会ったこと。
俺に事実を知られるのが怖かったこと。
隠し続けるのが辛かったこと。

彼女のお腹に手術跡があるのは知ってた。
胃潰瘍の手術だって言葉を馬鹿正直に信じてた。

「おまえにストレスなんてあんのかよ?」

なんて軽口言っちゃってた。
ヤバイ俺超最低だ。
俺がプロポーズでモンモンしてた以上に、彼女は長い間、心に悲しみを隠してた。
ヤバイそんなの。
俺は5年どころか5分だって耐えられない。

でも彼女はそんなこと全然表に出さなかった。
笑ったり怒ったり寝てたり普通に暮らしてるように見えた。
凄い。
ヤバイ。
実はこの時点でまだ俺は固まってる。
というか正座して聞いてた。
喋ってるの彼女ばっかり。
俺なんの言葉もかけてない。
ヤバイ。
最低。
そんな俺を今度は彼女が泣きはらした目で見据える。

「こんな私でも結婚したい?」

物凄い怖い目だった。
とっても悲しい目だった。
俺は何も言えなかった。
まったく不甲斐ない声帯だ。
こんな時まで言葉が出ない。
だから力一杯、激しく、プロポーズの言葉以上に思いを込めて首を振った。
縦に、上下に、 この勢いで石油掘ったら日本の燃料事情解消できるんじゃないかってくらい思いっきりブンブン振った。
端から見るとバカみたいだが不甲斐なくて情けなくて意気地なしな俺には、こんな返事しかできなかった。

そんな俺に抱きついて泣いてる彼女スゴイ。
そんな彼女に

「一緒に頑張ろう。」

とか芸の無いこと言ってる俺ヤバイ。
超がんばろう。
今日から重荷は二人で分けあえるから超がんばろう。
おまえを泣かせるのは今日で最後にするって誓うから。

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