日常の泣ける話

人生で最も高い買い物

私がまだ30代前半だったころ、人生で最も高い買い物をしました。

当時、マツダのファミリーカーに乗っていた私は、一度でいいのでかっこいい
スポーツカーに乗りたいという気持ちを持っていました。

そんな中、マツダのRX-8の最終モデルが発売されるという話を営業担当から聞きました。

興味はあったものの、新車で300万円以上する高い車なので、買えるはずもない車でした。

いろいろと調べていると、残価設定クレジットを利用すれば、半額程度で車が買えることがわかりました。

お店でタイプRSという一つ前のモデルのRX-8を試乗し、エンジンのレスポンスの良さが気に入りました。

ただ、ロータリーは燃費が悪いということが気になっていました。

同じ時期にホンダからCR-Zというハイブリッドのスポーツカーも販売されていたので、こちらも比較検討しました。

燃費が良いというのは魅力でしたが、エンジンのレスポンスや乗り心地の点でRX-8のほうが魅力的でした。

営業担当と何度か商談を重ねて、購入することを決めました。

諸費用込みで430万円という人生で最も高い買い物でした。

下取りが100万円で、残り330万円から残価100万円を引いた、230万円を5年ローンで支払う形になりました。

当時、私は契約社員として上場企業の子会社で働いていました。

非正規ながら給料はそこそこよく、法律改正もあり正社員化も近いということで、雇用に関する心配はありませんでした。

納車されたRX-8は美しいデザインが気に入りました。

コーティングをしていたので、洗車をするとピカピカに輝いていました。

8千回転まで回したときの音は最高でした。

RX-8を購入して1年半ほど経過したある日、会社で職場の上司に呼ばれました。

「残念なお知らせがある」とのことでした。

会社の人員計画が変化し、契約の延長を打ち切るとのことでした。

それから1か月後に雇止めとなり、新しい職を探すことになりました。

なかなか良い条件の仕事は見つからず、やむを得ず派遣社員として働くことになりました。

派遣社員になり、給料がかなり下がりました。

車のローンの支払いが徐々に大変になり、やむを得ずRX-8を手放すことにしました。

2年間大切にしていたRX-8で手放したくなかったのですが、生活を維持するためにはやむをえません。

買取業者に査定してもらい、買い取ってもらいました。

そこそこよい値段がつきました。

車を業者に引き渡したときの悔しい気持ちはずっと忘れることはできません。
それから数日後、カーセンサーを見ていると自分の車が売られていることがわかりました。

5年後にローンを一括返済して、ずっと乗る予定だった車でした。

それから、約2年、派遣社員として働いていて会社の正社員になることができました。

収入は派遣社員時代の2倍、RX-8を手放した契約社員時代の1.5倍以上となり、車を維持することは苦ではありません。

正社員になってから別の新車を購入しましたが、RX-8ほどの思い入れはありません。

今でも大切なRX-8を維持できなかったこと後悔し続けています。

ときどき、カーセンサーを見ては自分の車が売られていないか確認しています。

オプションをたくさん付けた自分のRX-8は、見ればすぐにわかります。

「同じ車を見つけたら、買い直してあえようか」などと考えることもあります。

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