家族の泣ける話

【家族の感動する話】●●じゃなくておめーが死ねばよかったんだよ

俺には年の離れた兄貴が2人いた。

上の兄ちゃんは大人しいタイプで、下の兄ちゃんは活発で騒がしいタイプ。

俺が小学生の時には2人とももう中学生と高校生だったからか、

2人とも俺をすげー可愛がってくれて(もちろんケンカもめちゃめちゃしたけど)

宿題見てくれたりゲームとかプロレスとかの相手を真剣にしてくれたり、

くだらない話とか面白い話、ちょっとエロい話とかまで教えてくれたり。

俺も兄貴2人のことが大好きだったし、自慢の兄貴たちでもあった。

でも俺が中学に上がってちょっと経った頃、下の兄ちゃんが無関係の事故に巻き込まれて死んだ。

俺も上の兄ちゃんも両親も当然辛くて悲しくてやりきれなくて、マジでどうしようもなかった。

それからようやくちょっと気持ちが落ち着き始めた頃に、俺は自分の友達から

「上の兄ちゃんがオタクで、しかもそのせいで兄ちゃんがクラスの奴とかからバカにされてるらしい」

って話を聞いた俺は最初

「こいつ、俺の兄ちゃんのこと何悪く言ってんだよ!」

と内心ですげーむかつきながら

「んなわけねーよ」

って答えてたんだけど、結局それは事実だった。

兄ちゃんがアニメとか好きなのは知ってたけど、「オタク」とか言われるほどだとは思ってなかったのね、俺。

で、俺は何かもうよくわかんないけど、兄ちゃんがそういうオタクだったってことが恥ずかしいやら、兄ちゃんが他の奴らにバカにされてるってことが悔しいやら、腹がたつやらで頭が混乱しちゃって、オタク発覚の何日か後に上の兄ちゃんと大ゲンカした。

ケンカっていうか、俺が一方的に自分勝手に兄ちゃんを責めるみたいな酷いもんだったけど。

で、そん中で俺は信じられないことに

「●●(下の兄貴)じゃなくておめーが死ねばよかったんだよ!」

と怒鳴ってしまった。

もちろんそんなこと微塵も思ってないし、俺は自分が最低なこと言ったってこともすぐ自覚してハッとなったんだけど、その直後に部屋の前で止めに入るタイミングをうかがってたらしい親父がものすごい勢いで部屋に入ってきて、そんで有無を言わさず思いっきりぶん殴られた。

でも、俺はもう頭に血がのぼりきってるのと、今更引くに引けなくなってるのとで、自分が完全に悪いってわかってるし、兄貴にも素直に謝りたいのに

「何すんだよクソ親父!」

って怒鳴った。

兄貴は俺と親父の間に入って、俺を更に殴ろうとする親父を必死に宥めて抑えて、しかも泣きそうな顔で俺に

「ごめんな、ホントごめんな」

って謝るんだよ。

俺はもう恥とかそういうの一切どうでもよくなって、そのまんま大声で泣いた。

死んだ兄ちゃんのこととか色々思い出して、ほんとにどうにもならんぐらいに頭ん中ぐちゃぐちゃだった。

その時はいつのまにか俺だけじゃなく親父も兄貴も泣いてたし、駆けつけてきた母さんも泣いてた。

その後、謝る俺に兄ちゃんは「

俺こそごめんなあ、こんな兄貴でかっこ悪いよなあ」

つって申し訳無さそうに言った。

俺は、下の兄ちゃんは確かにかっこよかったけど、俺にとってはあんたも最高にかっこよくて大好きな兄ちゃんなんだよ。

とかって、心底思ってたし言いたかったんだけど大泣きしてて

「ごめんなさい」

って言うのが精一杯だった。

今にして思うと兄貴がオタクだろうがそんなのどうでもよくて、ただ不条理に死んでしまった下の兄貴のことで、八つ当たりする相手が誰でもいいから欲しかっただけなんだと思う。

本当に、どんだけ悔やんでも悔やみきれない。

だから尚更、俺はこの時のこと全部、自分が言ってしまったことも親父に殴られたことも、兄貴を傷付けたこともずっと忘れない。

現在俺は大学生、兄貴はとっくに就職して実家にはたまにしか帰ってこられないけど、兄貴が帰ってくると俺はいつも兄貴と親父と3人で酒を飲む。

兄貴は親父よりも酒が強くてそこにちょっと憧れる俺。

なんだかんだ言っても兄ちゃんは今でも俺の自慢の兄ちゃんだし、大好きな兄ちゃんでもある

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