家族の泣ける話

にっこりわらった

母のおなかを殴った記憶がある。

小学校5年生のときの確か授業参観日だったかな、親も参加してのドッジボールで、
ルールは
・親に当たっても退場しない
・子に当たったら親と一緒に退場
・外からボール投げるのは子だけ
・復活な
ってかんじだったかな?よく覚えてないや。

今考えると俺の母は太った体で俺のことを守ってくれてたんだな。
でも当時の俺には邪魔してるようにしか思えなくて、ゆるいボールがきて俺がキャッチしようとしてるのに立ちふさがる母。
そんでね、取れなくて、悔しくて握ったコブシを母の腹に叩き込んだ。

そのとき母はわずかに顔を歪ませながらにっこり笑って「ごめんね」って、言ったのよ。

その日以来、母に親孝行は、してきたつもりだった。

んで先月なんだけど、小4の息子に八つ当たりのようにハラ殴られたのがゲロ痛かったのね。肉体労働のこの俺が。
でも本当に痛かったのは、あの思い出の方で。
それと「親孝行してきました」なんてツラ下げて生きてきた俺の姿を思い返してホント吐いた。嗚咽したよ。

息子びびってたね。
でも思春期になったらコイツ俺のことナメて来るんだろうな。
そのとき俺はどうするかわからんが、あの時母はにっこりわらったんだったな。

母はまだ元気だ。
でも、過ぎた日を取り戻す親孝行なんてできない。
母生きてんのに、生きててくれてんのに。

だからこの辛さを一生胸に刺したまま、母とこの体に流れてる血とそしてこの血脈を継いでくれた妻と息子の幸せを一生懸命考えるよ。

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