あなたへ
あなたが、戦地にお向かいになってからもう、何度目の夜でしょう。
娘も、こんなに大きくなって。
あなた、見ててくれていますか?
あのとき、私はあなたに言いました。
「お国のために、立派に死んで来てください。」
と。
私はあなたの小さくなっていく背中に、いつまでも手を振り続けました。
幾度となくくれた、戦地からのお便り、何よりの私の心の支えだったんですよ。
不思議と、あなたは、いつも私のそばに居てくれている。
そう思ってましたから。
私は今でも後悔しています。
あの時、非国民と言われようが
「無事に帰ってきてください。」
と、 ちゃんと言えばよかった。
今日は、あなたの娘の20歳の誕生日。
あなた、わたし、この子を立派に育て上げることが出来ているでしょうか?
私、信じていますよ。
いつか、私の人生が終わるときが来たら、
あなたは、私に「よく頑張ったね。」って、言ってくれると。
今度、生まれ変われるなら、またあなたと一緒がいい。
平和な世界で、ゆっくり散歩なんかしたいものだわ。
毎日笑って、毎日手をつないで、毎日キスして過ごすんです。
とても、素敵じゃないですか?
わたしは、あなたをずっと愛しています。
いつかまた出会ったときは、またあなたに恋をします。
その日まで、どうか気長に待っていてくださいね。