友情の泣ける話

保育園から小六までずっと仲が良かった

うちは母さん一人で俺と妹を育てていた
だから毎週土日は10kmほど離れたばあちゃんの家に預けられていた…

そんな中にも俺には「親友」と呼べる男がいた
名前は「緋絽」(ひろ)←仮名
緋絽の両親は仲が悪かった
喧嘩なんてしょっちゅうだった

緋絽とは保育園から小六までずっと仲が良かった
山や川でバカやりまくった
夜は必ずどちらかの家に泊まっていた
お互いあたまが良かったから「絶対同じ高校行こうな」とか言ってたっけ
今思えば最高の日々だった…
緋絽の家は、ばあちゃんの家は近かったが、うちからは遠かった
いや遠すぎた…
中学に入り部活で忙しくてあまり行けなくなった

なんだかんだで会えないまま2年という長い時がたった
ばあちゃんによれば緋絽はバスケ部の部長になったらしい
でも俺もテニス部の部長になっていた
正直「同じ高校に行こうな」なんて約束は忘れてた
だから自分の行きたかった高校を受験した
普通に合格できた
合格者発表の帰りにフッと「同じ高校行こうな」っという言葉が頭をよぎった
その次の日の朝ばあちゃんから電話が来た
「緋絽が自殺した」という内容だった…
俺は電車に乗って急いで緋絽の家へ向かった
家に入ると緋絽は横になって寝て(死んで)いた
顔には白い布が…
それは今でも鮮明に覚えている
自殺の原因はやはり両親の問題だった
緋絽の母さんは号泣して「私が悪いの…」と言いながらうずくまっていた
父さんは「お前が悪いんだよ!」なんて言って母さんを責めたてた
俺はなぜかその態度に無性に腹が立った
俺を見つけた緋絽の父さんは逃げるように部屋を出た
もちろん俺は追いかけた
そして緋絽とよく遊んだ川の橋で緋絽の父さんを捕まえた
おもいっきり一発殴ってしまった…
緋絽の父さんの顔をよく見たら泣いていた…
緋絽の父さんは「わかってるよ…俺のせいだってことくらい!」と叫んだ
そして家へ走っていった
俺は橋の上で立ち尽くしたままだった

緋絽の家族にとって俺は家族のような存在だった
だから遺品整理にも立ち会わせてもらえた
鍵のかかった引き出しの鍵がどうしても見つからなかった
仕方なく引き出しをバラシて中を見た
そこには俺への手紙と箱がポツンと入ってた
手紙の読むと
「悪い!俺さぁ同じ高校行くっていう約束守れないわ…
今までたくさんバカやってさ、でもたくさん勉強もやってさ、同じ目標もってさ、すんげぇ楽しかった
いいなぁ~もう彼女とかいるんだろうな…
部活も高校の方がおもしろいだろうな
俺は行かないんだけど
だからさ…俺の分まで楽しめよ
それじゃあな」

俺は「なんだよこれ…」とつぶやいて手紙をグシャと強く握った
俺は外に飛び出して何度も何度も手紙を読み直した
そして「約束守れなかったのは俺の方だよ!」と叫んで大泣きした
俺の涙でぬれて手紙はもう読めなくなっていた

家に帰ったらばあちゃんが引き出しに手紙と入ってた箱を俺にくれた
中にはもう一つ同じ手紙が入っていた
俺はまた泣いていた
あいつは俺が手紙を読めなくすることを予想してたんだ
よく読んだら最後に「俺らってまだ親友だよな?」と付け足されていた
俺は泣き続けた
あいつを思い出すたびに泣いた

それから1年…
俺は高校2年
なにがあっても、もう泣かない
だってあんなに悲しいことはなかったのだから

最後に親友へ
「親友に決まってんだろ」

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