はじまり
「3年後、またここで会おう」
彼がそう言ったのは、春の終わりの午後だった。
大学卒業の日。
進む道が違うとわかった時、私たちは別れるしかなかった。
でも、本当に終わりにはしたくなかった。
だからその駅の改札で、指切りをして、約束した。
ふたりの日々
彼は大学でジャーナリズムを学び、私は地元で教職に就いた。
遠距離も、電話も、SNSもやめた。
「次に会うまでは、お互いの人生をちゃんと歩こう」って彼が言ったから。
それは少し残酷な約束だった。
だけど、どこかで私も同じ気持ちだった。
3年後。再会したとき、今よりもっと好きになっていたいと思った。
迎えた3年後
そして、その日が来た。
桜が咲き始める、ちょうど3年前と同じような午後。
私はあの駅に向かった。
約束の時間、約束の改札口。
待つ間、手が少し震えていた。
「来てくれるよね」って、何度も心の中で繰り返した。
でも、時間は過ぎていった。
30分、1時間……彼は来なかった。
帰ろうとしたその時
諦めかけて、駅を出ようとしたとき。
人混みの中で、懐かしい声がした。
「…待たせた」
息を切らせて、彼が立っていた。
「電車が止まってて、タクシー全然つかまらなくて…でも、どうしても来たかった」
私たちは、3年ぶりに目を合わせて、泣いた。
言葉なんていらなかった。
ただ、約束が生きてたことが、すべてだった。
その後
「…また始めようか」
彼が差し出した手を、私は迷わず握った。
あれから、1年。
今は同じ街で暮らしている。
あの春の駅の午後が、今でもふたりの原点だ。