家族の泣ける話

祖父の手を握ると温もり

まだ幼い頃、祖父を慕っていた私はよく一緒に寝ていました。私は祖父のことをとても慕っていたし、祖父にとっては初孫ということもあってよく可愛がってくれていました。小学校は良好な関係でしたが、やがて中学に進学し中学三年になる頃には会話も少なくなり、一緒に寝ることもなくなっていました。祖父の方から一緒に寝ようと言ってくれたときもありましたが、思春期が邪魔をして私は嫌がっていたんです。友達に冷やかされたりすることもあったので、意図的に祖父のことを遠ざけていたんです。それでも祖父は変わらず可愛がってくれていました。その頃の私は祖父を邪険に扱っていたと思います。やがて祖父は私に何も言わなくなっていきました。

当時の私は学校や部活が居場所だと感じ、家族との関係も段々悪くなっていました。それから数年後、祖父が倒れたと連絡がありました。私はその頃、素行の悪い高校生になっていてお見舞いにも一度しか行かなかったんですが、その一度のお見舞いを祖父は凄く喜んでいました。そんな関係のまま私は大学に進学し、祖父のことも忘れて学生生活をしていた頃、両親から祖父が亡くなったと連絡をもらいました。すぐに入院先の病院に向かい祖父の遺体を確認しました。もう長いこと、まともに会話をすることもなかった祖父なのに、もう声が聞けないと思うと涙が溢れそうになりました。気持ちの整理がつかない私に、両親は祖父が持っていたという一枚の写真を渡してきました。

その写真は小学校の頃、祖父と一緒に地方へ観光に行ったときの写真でした。まだ私と仲が良く、祖父も足腰が元気で私を肩車していたときのものです。祖父が大事に持っていた写真を両親から渡されたとき、お見舞いに一度しか行かなかった事や思春期に冷たい態度をとったことを後悔しました。祖母の話では祖父はいつも私の話をしていたらしく、受験の合否や体調の心配をしてくれていたそうです。私は祖父のことを何も考えず忘れてしまっていたのに、祖父は私のことを気にかけてくれていた、その事実を知ったとき涙が溢れて止まりませんでした。すっかり痩せ細り病室に横たわる祖父の手は冷たく、もう温かくなることもありません。それでも祖父の手を握ると温もりを感じた気がします。

月日が流れ、私も親になり家庭を持ち子供と毎日忙しく過ごしています。私によく似た子供の成長を祖父の墓前に見せるため、毎年実家に顔を出すのが私の家族の恒例行事となりました。

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