当時、僕は愛知県内の大学に通う大学生だった。
大学4年になり就職も決まり、卒論の準備を進めていた。
僕の大学は愛知県内の私立大学。
全国的には有名ではないが、県内ではそこそこ知名度の高い大学だった。
愛知県と言えば、トヨタ自動車が有名だが、僕は運よくそのトヨタ自動車の関連会社に就職が決まっていた。
卒業まであと半年という時期に、世間であるニュースが。
東北地方の国立大学で採点ミスが判明したということだ。
偶然の一致なのか、僕が受験した大学だった。
なにやらプログラムのミスで、得点が調整されておらず、本来合格のはずの受験生が多数不合格となっていたとのこと。
「どうせ自分には関係ない」と思っていたある日、その国立大学から電話がかかってきた。
採点ミスで不合格となった受験生の一人が自分だった。
その大学は入学した私立大学の受験料を補てんしたり、さまざまな支援を行うとのことだった。
さらに、その大学に入学させてもらえるとのこと。
「就職も決まっているし、何をいまさら・・・」と思った。
その瞬間、ふと、あの時の気持ちがよみがえってきた。
愛知県という土地は、国立大学志向が強く、国立大学と私立大学ではその後の人生が違うとまで言われている。
自分も、親も国立大学に進学することを強く願っていた。
でも、その願いが叶わず、失意のまま地元の私立大学に進学することになった。
「国立大学に入学したい」という気持ちが日に日に強くなっていった。
大学4年生になった僕は、大学を中退して、東北地方の国立大学に入学することにした。
決まっていた内定先の企業も辞退した。
それから、入学した国立大学に2年間在籍し、全く別の会社に就職した。
就職先の会社は、この事件に対して理解を示してくれている会社だった。
あれから、もう10年経過した。
大学に落ちた時の事、その大学から3年後に電話がかかってきた事。
あの時、そのまま国立大学への入学を辞退して、就職していたらどうなっていただろうか。
今は、決して大きいとは言えない会社で働いています。
一流企業の関連会社の社員として、何不自由なく生活していたはずだ。
でも、これでよかったと思っている。
お金は得られなくても、納得のいく学歴を手に入れられたから。