息子は赤ちゃんの頃から好奇心旺盛で元気な男の子でした。風邪もほとんど引かず元気に成長していく姿に親として嬉しい気持ちでいっぱいだったのです。しかし、2才の頃風邪をこじらせてしまい、何日も熱が引かず、食欲もなく元気がない日々が続いていた為、小児科で診察してもらったのですが、風邪という診断で様子を見ていました。一時的に体調が良くなったものの、毎日ぐったりと横たわる時間が増え、これは何かおかしいと思い再診。そこで、息子が一生涯治らない病気になっていたことが発覚したのです。
命に直接的に関わる病気ではないものの、一生涯治療をし続ける必要があること、またその治療が小さな息子にとってはかなり苦しいものであったことから、病名を聞かされた時に泣き崩れてしまいました。すぐに入院することになり、治療を開始する必要があると言われ、家に帰ることができないことを知った息子は泣き叫び「帰りたい」と訴え続けてきたのです。息子はなぜ自分が急に元気がなくなったのかは分かりませんでしたし、治療の必要性を理解することはできません。苦しい治療をする度に泣き叫び、苦痛に顔を歪める息子の姿を見れば見るほど、変わってあげられないことに申し訳ない気持ちでいっぱいになったことを覚えています。
息子は入院生活の中で病気の症状が落ち着いてきたこともあり、日に日に元気になっていきました。治療さえしていれば、病気じゃない人と同じような生活ができることを知ることで、私自身も落ち着き、息子の為に治療を続けなければいけないと思うことができたのです。しかし、ある日の夜、息子の寝顔を見ていた時、自分自身のせいで息子が辛い思いをしているのではないか、もっと早く病気に気付いていれば違った人生があったのではないかと後悔ばかりが襲ってきました。私の様子に気付いた看護師さんが声を掛けてくれ、「病気になるのは誰のせいでもない。今は苦しくて辛いかもしれないけど、病気になったからこそ分かることもあるよ。」と教えてくれたのです。
あれから10年、息子は元気な小学生になり、友達と遊ぶ充実した毎日を過ごしています。今では、息子が持病を持っていることに誰も気づかないぐらいです。息子の病気を通して、健康で生きていくことの尊さを知ることができました。辛い治療を毎日頑張っている息子の強さに励まされる日も多いです。病気になった時は、人生がこれで終わってしまったような気持ちになっていましたが、息子に持病があろうがなかろうが私たちにとってかけがえのない大切な存在であることに変わりありません。