新弟子検査での奇跡



2012年12月26日、東京・両国国技館で初場所の新弟子検査を行い、行い、前日までは1メートル60だった伊藤爆羅騎が身長1メートル67以上、体重67キロ以上の合格基準を満たした。

かつて、舞の海が身長173cmに満たなかったため、頭にシリコンを入れて新弟子検査に臨んだことが話題となった。

その後、日本相撲協会は合格基準を緩和して167cm以上でも一定の基準を満たせば合格させるようになった。

しかし、伊藤爆羅騎の身長は160cmで明らかに合格基準には届いていなかった。

新弟子検査当日、身長計に乗った伊藤爆羅騎は、身長を伸ばそうと一生懸命背伸びをした。

ところが、身長を計測した玉ノ井親方(元大関・栃東)は足元を全く見ることもせず、身長を測定した。

しかも、その後ろに座っていた審判員も誰一人おとがめしなかった。

伊藤爆羅騎身長計の上ではかかとが上がっていたが、角界の懐の深さも味方し、奇跡の7センチアップで力士への第一関門を突破。

前日までは合格基準に7センチ満たなかった伊藤爆羅騎が、奇跡を起こした。

実は、当日の背伸びだけではなく、ほかの努力もしていた。

秘策その1「髪で身長を稼ぐ」。

3カ月伸ばし続けた髪を部屋の床山が15分をかけてセットし、偽装に成功した。

これは舞の海も実践した方法だ。

その2は「マッサージ作戦」だ。入門した22日から、来年1月から式秀部屋を継承する小野川親方(元幕内・北桜)が「背筋を伸ばし、体のバランスを整える」マッサージを伝授。おかげで推定で2センチもアップしたという。

その3は「ひたすら睡眠」。

起きれば身長が縮むため、前日は11時間睡眠。

移動の車でも後部座席で横になり、国技館でも検査が始まる直前まで寝そべった。極めつきは「秘技背伸び」。

測定した玉ノ井親方(元大関・栃東)は「気にならなかった。夢を持つ子をサポートしたいから」と話した。