シドニー五輪柔道 重量級 涙の表彰台



00年シドニー五輪柔道男子100キロ超級決勝戦、開始1分35秒で、篠原信一の内また透かしがフランスのドイエに決まった。

ガッツポーズの篠原、肩を落とすドイエ。しかし、主審の判定は篠原の一本でなくドイエの有効だった。

12年ぶりの金メダルがかかったこの試合。身長190cm、体重135kgと外国人に勝るとも劣らない体格、パワーを武器に、決勝まで一本勝ちを続け、決勝戦へ。

相手は、長年この階級に君臨してきた身長196cmのダビド・ドゥイエ。

柔道競技の最終種目として行われた100kg超級決勝。

日本勢はこの階級で1988年ソウル五輪で斉藤仁が優勝して以来、最重量級の王座を逃し続けており、3大会ぶりの覇権奪還が篠原に課せられた至上命令でした。

試合序盤はお互いに警戒して組み手争いに終始し、中々技を掛ける展開には至りません。

試合開始から1分40秒頃、篠原の背中の帯を掴んだドゥイエが内股を仕掛けます。

だが、ドゥイエの動きを見抜いた篠原は内股すかしで返し、ドゥイエを背中から畳に叩きつけます。

一本勝ちを確信した篠原は両手を挙げてガッツポーズを見せます。日本人が大勢駆けつけた会場も、金メダル獲得の喜びに包まれました。

ところがその直後、電光掲示板にありえない表示がなされました。

なんと、一本を掛けられたはずのドゥイエに有効のポイントが表示。

2人を間近で見ていた副審は篠原の技を一本と宣告しますが、あろうことかニュージーランド人の主審クレイグ・モナガンともう1人の副審はドゥイエの内股を有効と判定。

結局、この誤った判定は覆らず、試合はこのまま続けられました。

その後、消極的になったドゥイエに指導が取られ、お互いに有効1つとなったのでポイントでは並びます。

残り時間も僅かになったので、細かいポイントを奪えば勝敗の趨勢が決する展開でした。

そして、試合残り45秒、篠原が内股を仕掛けますが倒しきれず、逆にドゥイエに返されます。

見た目には腹ばいに倒されたので効果に相当するポイントかと思われましたが、なんとこれを主審は有効と判定。

その後、篠原は反撃を試みるもポイントを得るに至らず、結局この有効のポイントで上回ったドゥイエが勝利を収めて五輪2連覇を達成。

誤審となった原因は、内また透かしという技が高度過ぎて、主審が見切れなかったと言われています。

その後、涙を流しながら、うなだれて表彰台に上る篠原選手の姿。

誤審であるにもかかわらず、「自分が弱いから負けた」と素直に負けを認めた発言をしました。

悲しい過去を持つ篠原選手ですが、落ち込んでふさぎ込むこともなく、持ち前の明るさで芸能界で活躍されています。