私には父と母と中学一年生の弟がいて、私が高二の頃まではごく普通で平凡な生活を送っていた。
多分、私が高三になった頃から両親がお互い何も話さなくなっていた。
気付いたときには、家族みんなで笑って食事することも、家族みんなで寝ることも、みんなで旅行に行くこともなくなってた。
一番大好きだった場所が、いつの間にか嫌いになって、家にいるだけで息がつまるようになり、自分でも知らないうちに親にも気を使うようになっていた。
そんな毎日が続いて、今までありえなかったことが「当たり前」になってしまい、そんな家族が嫌で私は家を出て彼氏の家に泊まったり、友達とオールしたり。
しばらく家には帰らなかった。
そんなある日、いつもなら何も言わない母から「帰っておいで」のメール。
とりあえず理由を聞いた。
返ってきたメールを見た瞬間…真っ先に目に入ったのは「離婚」という二文字。
今まで考えたことなんかなかった親の離婚。
いつか家族が元に戻る日が来るのを、勝手に信じていた自分が情けなくて…。
悔しくて、悲しくて、ひたすら涙があふれた。
やっと落ち着いてから家に帰ると、私以外の家族がリビングのテーブルを囲んで無言のまま座っていた。
それは、つい半年前の当たり前だった光景。
ただ何かが違うだけなのに…。
私は何も言えずに、ただ立っているのが精一杯だった。
しばらくすると母が口を開き、私がいつも座っている椅子を指差して優しい声で「しほ」と言った。
私は、震える声で「…はい」と返事をし、椅子に座った。
何秒か沈黙が続き、自分の心臓の鼓動と時計の秒針だけが、静かに聞こえていた。
緊張感の中、ようやく父が口を開き
「…ごめんな」
と呟いた。
そのあと母が言った言葉は
「二人とも、お父さんとお母さん、どっちにつく?」
もうだめなんだ…
(どっちかなんて選べない。私にとってお父さんとお母さんは二人で一つなんだよ…?選びたくないよ…)
必死で涙をこらえて
心の中で泣いていた…
そして見つけた私の方程式は
『2-1=0』
2から1を引いちゃうと…もう何にもなくなっちゃうんです。
だから私はどちらも選びませんでした。
と言うより、選びたくなかったんです。
毎日、一生懸命働いてくれたお父さん。
私を産んでくれて、18年間育ててくれたお母さん。
自分には、そんな二人を選ぶ資格なんかないと思いました。
結局、戸籍上は母の方になったけれど、私は彼氏と同棲することにしました。
今では月に2、3回程度ですが、父とご飯を食べに行ったり、母と買い物に行ったりしています。
でもやっぱり寂しくて、彼氏や友達の前だけは我慢しきれずに泣いてしまうこともあるけど、両親が幸せなら私はそれで充分だと思いました。
家族は、離れ離れになっても絶対に途切れることのない大きなものなんだなぁと改めて実感することができました。