俺には姉がいた。
歳が10は離れた姉だ。
小さい頃はクリア出来ないゲームをワガママ言ってやってもらったもんだ。
親に怒られて拗ねてた時、
「何泣いてんの!胸張って次失敗しなかったらいいじゃん!」
って慰められてたものだ。
宿題をよく一緒に手伝ってもらったり、悩みも聞いてもらったものだ。
喧嘩して、泣いて帰った時、
「やったやつだけが悪いなんて考えはダメだよ!自分にだってやられるだけの理由はあるかもしれないんだから、それを一緒に克服していこ?」
と正義のヒーローにも見えた姉もしばしば。
姉に彼氏が結婚して、式に行って泣いた時、
「祝ってくれるのは嬉しいけど泣きすぎwもらい泣きしちゃうから止まってw」
と公の場で共に泣いたものだ。
子供が出来て数年して、家に来た時
「この子泣き虫なのよねぇー。お前に似たのかなw」
と家の空気をひとつ変えてくれたものだ。
あれから少しして、あなたは子供を置いて旦那さんと一緒に逝ってしまいました……
交通事故……。
赤信号がどーたらと聞こえ、両親の怒りの矛先を考えると、信号無視が原因だったのだと思います。
偶然なったのならそのへんの違う人にでも……
なんて考えてしまい、
必然なら代わりに俺がなんてもの思ってました。
俺はうずくまっていた。
そこに姉の子供が切り出したんです。
「泣いてるの?」
「泣いてないよ!どっかで遊んでろよ……」
「泣いてもいいってママ言ってたよ?」
「ふぇ?」
「 本当にダメなのは、泣くところを見せることじゃなくて、泣いてる理由をいつまでも見せないでいることだって。」
俺の前には小さいヒーローがそこにいてその日の俺を助けてくれました。
いつも助けてくれたヒーローと比べると背丈も声も違ってたけど、その堂々とした言い方は姉そのものでした……。
俺もそろそろ20歳。
苦しいことも楽しいこともいろいろありましたが、不自由なんてありません。
だって、小さな頃から見てきたヒーローは現実ではいなくても、過去の頃にいたヒーローは確かに今の僕の支えともなってくれるからです。